海に寄せて
帰りたい、帰りたい、帰りたい。
まるで、音楽のように紡がれる望郷。
帰りたい、帰りたい、帰りたい。
寄せては返す波のように、くりかえされる。
帰りたい、帰りたい、帰りたい。
いったい、どこへと帰りたいのか。
帰りたい、帰りたい、帰りたい。
帰る場所など、どこにもないのに。
自分自身しか持たず、
故郷など、とうに喪失してしまったのに。
帰りたいと、強く願う。
帰りたい
どこへ
帰りたい
いつへ
たどりつくことなどできない
すでに失われた それを
記憶が抱きしめる
帰りたい、帰りたい、帰りたい
体をめぐる海がなき騒ぐ
帰りたい、帰りたい、帰りたい
頬をぬらす塩水が訴える
帰りたい、帰りたい、帰りたい
孤独にうめく心が叫ぶ
帰りたい、帰りたい、帰りたい
潮騒が歌う
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